Memcachedとは?インストール方法および使えるコマンド操作例

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はじめに

こんにちは! 今回は、高速なキャッシュシステムとして知られるMemcachedについて取り上げます。Memcachedは、データベースへの負荷を軽減し、アプリケーションのパフォーマンスを向上させるための優れたソリューションです。この記事では、Memcachedの基本的な使い方を徹底的に解説します。インストールの手順や設定方法、使えるコマンドなどを詳しく説明するとともに、RedisとMemcachedの違いについても触れていきます。

Memcachedとは?

Memcachedは、高性能な分散型メモリオブジェクトキャッシングシステムです。主にデータベースから取得したデータやAPIの結果などを一時的にメモリ上に保存することで、頻繁にアクセスされるデータを高速に取得できるようにします。Memcachedを利用することで、データベースへのクエリ発行回数を減らし、アプリケーションの応答速度を大幅に改善できます。

Memcachedの主な特徴は以下の通りです:

  • シンプルなキーバリュー型のデータ格納方式
  • 分散アーキテクチャによる優れたスケーラビリティ
  • TCPとUDPの両方をサポート
  • 様々なプログラミング言語に対応したクライアントライブラリ
  • メモリ上でデータを管理するため、高速なレスポンスが可能

以下のようなケースでMemcachedの導入を検討すると良いでしょう:

  • データベースへの負荷が高く、アプリケーションのパフォーマンスに影響が出ている
  • 同じデータに対して頻繁にアクセスがあり、キャッシュの利用で応答速度を改善したい
  • スケーラビリティが求められるWebサービスを開発している

Memcachedのインストール方法

Memcachedは、Linux、Windows、macOSなど、様々な環境で利用できます。ここでは、各OSでのインストール方法を見ていきましょう。

Linux環境でのMemcachedのインストール手順:

  1. ターミナルを開き、以下のコマンドでMemcachedをインストールします:
    sudo apt-get install memcached
  2. インストールが完了したら、Memcachedのバージョンを確認しておきましょう:
    memcached -V
  3. 続いて、以下のコマンドでMemcachedを起動します:
    sudo systemctl start memcached

これでLinux環境へのMemcachedのインストールは完了です。

Windowsへのインストール方法:

  1. 公式サイトからWindows用のインストーラーをダウンロードします。
  2. ダウンロードしたインストーラーを実行し、指示に従ってインストールを進めます。
  3. インストール完了後、コマンドプロンプトを管理者権限で開きます。
  4. 以下のコマンドを実行して、Memcachedのサービスを開始します:
    net start memcached

Memcachedが正常に動作していれば、Windowsへのインストールは完了です。

Macでの導入手順:

  1. Homebrewがインストールされていない場合は、まずHomebrewをインストールしておきます。
  2. ターミナルを開き、以下のコマンドでMemcachedをインストールします:
    brew install memcached
  3. インストールが完了したら、以下のコマンドでMemcachedを起動します:
    brew services start memcached

これでmacOSへのMemcachedのインストールは完了です。

Memcachedの設定方法

Memcachedの設定は、設定ファイルまたはコマンドラインオプションを使って行います。Linuxの場合、設定ファイルは通常「/etc/memcached.conf」にあります。

memcachedの設定ファイルの位置は、オペレーティングシステムやインストール方法によって異なりますが、一般的に以下のいずれかになります。

  1. /etc/memcached.conf
  2. /etc/sysconfig/memcached
  3. /etc/default/memcached

主要な設定項目には以下のようなものがあります:

  • -p:Memcachedが使用するポート番号(デフォルトは11211)
  • -m:Memcachedが使用するメモリの最大サイズ(MB単位)
  • -c:最大同時接続数
  • -U:UDPポート番号

例えば、以下のようにコマンドラインオプションを指定してMemcachedを起動できます:

memcached -p 11211 -m 2048 -c 8192 -U 0

この例では、ポート番号を11211、最大メモリサイズを2GB、最大同時接続数を8192に設定しています。

Memcachedの設定を最適化するためのポイントは以下の通りです:

  • メモリサイズは、サーバーのRAM容量の半分程度に設定するのが一般的
  • 同時接続数は、想定されるアクセス数に応じて適切に設定する
  • 必要に応じて、複数のMemcachedサーバーを用意し、分散構成を取る

Memcachedをどこからでもアクセスできるようにする手順

  1. 設定ファイルを開きます。例えば、以下のコマンドを使用します。
    sudo nano /etc/memcached.conf
  2. 設定ファイル内の -l 127.0.0.1 という行を探します。これは、memcachedがローカルホストからのみアクセスを許可するように制限しています。
  3. -l 127.0.0.1-l 0.0.0.0 に変更します。これにより、memcachedはすべてのIPアドレスからのアクセスを受け入れるようになります。
  4. 設定ファイルを保存し、エディタを終了します。
  5. memcachedサービスを再起動して、変更を適用します。
    sudo systemctl restart memcached

セキュリティ上の注意点

セキュリティ上の理由から、信頼できるネットワークからのみアクセスを許可することをお勧めします。ファイアウォールを適切に設定し、必要なポート(デフォルトでは11211)のみを開放してください。また、認証機能を追加することで、セキュリティをさらに強化できます。これには、memcached用の認証プラグインやプロキシサーバーを使用する方法があります。

 

Memcachedで使えるコマンド

Memcachedには、データの操作やサーバーの状態確認に使えるコマンドが用意されています。主要なコマンドを見ていきましょう。

データの格納と取得:

  • set:キーと値を指定してデータを格納する
  • get:キーを指定してデータを取得する
  • add:キーが存在しない場合にのみ、データを格納する
  • replace:キーが存在する場合にのみ、データを更新する

例えば、以下のようにしてデータを格納できます:

set my_key 0 3600 5 hello

この例では、キー「my_key」に値「hello」を3600秒(1時間)の有効期限で格納しています。

キャッシュのクリア方法:

  • flush_all:Memcached上のすべてのデータを削除する

以下のコマンドを実行すると、キャッシュ内のデータがすべて削除されます:

flush_all

統計情報の確認:

  • stats:Memcachedの統計情報を表示する

以下のコマンドを実行すると、現在のMemcachedの状態を確認できます:

stats

表示される情報には、接続数やキャッシュヒット率、メモリ使用量などが含まれます。

PHPからMemcachedを利用する方法

PHPアプリケーションでMemcachedを使うには、以下の手順が必要です:

  1. Memcachedのインストール
  2. PHPのMemcached拡張モジュールのインストール
  3. アプリケーションコードでのMemcachedの利用

PHPでMemcached拡張モジュールを使えるようにするには、以下のコマンドを実行します(Linux環境の場合):

sudo apt-get install php-memcached

インストールが完了したら、PHPのコードからMemcachedを利用できます。以下は、データを格納と取得する例です:

<?php $memcached = new Memcached(); $memcached->addServer('localhost', 11211);
// データの格納
$memcached->set('my_key', 'hello', 3600);

// データの取得
$value = $memcached->get('my_key');
echo $value;
?>

PHPでMemcachedを効果的に活用するためのコツは以下の通りです:

  • 頻繁にアクセスされるデータをキャッシュする
  • 適切な有効期限を設定する
  • キャッシュのキー名を適切に設計する
  • 必要に応じてキャッシュをクリアする

RubyでMemcachedを使う

RubyからMemcachedを利用するには、dalli gemを使うのが一般的です。以下のコマンドでdalli gemをインストールします:

gem install dalli

インストール後、以下のようにしてMemcachedに接続し、データの読み書きを行えます:

require 'dalli'
dc = Dalli::Client.new('localhost:11211')

データの格納
dc.set('my_key', 'hello', 3600)

データの取得
value = dc.get('my_key')
puts value

Ruby on Railsでは、RailsのキャッシュストアとしてMemcachedを使うことができます。Gemfileに以下の行を追加します:

gem 'dalli'

続いて、config/environments/production.rbに以下の設定を追加します:

config.cache_store = :dalli_store, 'localhost:11211'

これで、RailsアプリケーションでMemcachedを使ったキャッシュが利用できるようになります。

PythonからMemcachedへアクセスする

Pythonでは、pymemcacheクライアントライブラリを使ってMemcachedにアクセスできます。以下のコマンドでpymemcacheをインストールします:

pip install pymemcache

インストール後、以下のようにしてMemcachedにデータを格納・取得できます:

from pymemcache.client import base
client = base.Client(('localhost', 11211))

データの格納
client.set('my_key', 'hello', expire=3600)

データの取得
value = client.get('my_key')
print(value)

Djangoアプリケーションでは、Memcachedをキャッシュバックエンドとして使うことができます。settings.pyに以下の設定を追加します:

CACHES = { 'default': { 'BACKEND': 'django.core.cache.backends.memcached.PyLibMCCache', 'LOCATION': '127.0.0.1:11211', } }

これで、DjangoのキャッシュAPIを通じてMemcachedを利用できるようになります。

Pythonでは、WebアプリケーションのセッションデータやDBクエリ結果のキャッシュなどで、Memcachedが活用されるケースが多いですね。

MemcachedとRedisの違い

Memcachedと並んで広く使われているキャッシュシステムにRedisがあります。MemcachedとRedisの主な違いは以下の通りです:

  • データ構造:
    • Memcached:キーバリュー型のみ
    • Redis:キーバリュー型に加え、リスト、セット、ソート済みセットなどのデータ構造をサポート
  • 永続化:
    • Memcached:データはメモリ上にのみ存在し、永続化されない
    • Redis:定期的にデータをディスクに保存し、永続化が可能
  • レプリケーション:
    • Memcached:レプリケーションの機能は標準で搭載されていない
    • Redis:マスター・スレーブ型のレプリケーションをサポート
  • マルチスレッド:
    • Memcached:マルチスレッドによる並列処理が可能
    • Redis:シングルスレッドで動作

一般的に、Memcachedはシンプルなキャッシュシステムとして、Redisはより高度なデータ構造と永続化機能を備えたストレージシステムとして使い分けられます。

【FAQ】Memcachedに関するよくある質問

Q. Memcachedの単体での運用は可能?

A. はい、単体でも運用できます。ただし、大規模なシステムではスケーラビリティを確保するため、複数台のMemcachedサーバーを用意することが一般的です。

Q. Memcachedの最大の利点は?

A. シンプルな構造とメモリ上でデータを管理することによる高速性が最大の利点です。適切に使うことで、アプリケーションのレスポンスを大幅に改善できます。

Q. MemcachedとRedisはどちらを選ぶべき?

A. アプリケーションの要件によって使い分ける必要があります。シンプルなキャッシュ機能のみが必要な場合はMemcachedを、高度なデータ構造や永続化が必要な場合はRedisを選ぶのが一般的です。

Q. Memcachedを利用する際の注意点は?

A. キャッシュするデータのサイズや有効期限の設定に気をつける必要があります。また、キャッシュのクリアタイミングにも注意が必要です。

Q. MemcachedとRDBMSのキャッシュの使い分け方は?

A. 一般的に、読み込み頻度が高く、更新頻度が低いデータをMemcachedでキャッシュします。一方、頻繁に更新されるデータは、RDBMSのクエリキャッシュを使うのが適しています。

Q. 大規模システムでMemcachedを使う際のアーキテクチャのベストプラクティスを教えて!

A. 以下のような点に気をつけると良いでしょう:

  • Memcachedサーバーを複数台用意し、負荷分散する
  • アプリケーションサーバーとMemcachedサーバーを分離する
  • 適切なシャーディング戦略を採用する
  • モニタリングとアラートの仕組みを導入する

Memcachedを使いこなそう!

Memcachedは、Webアプリケーションのパフォーマンス改善に欠かせないツールです。シンプルな構造と高速性を活かし、読み込み頻度の高いデータをキャッシュすることで、データベースへの負荷を軽減し、レスポンスタイムを短縮できます。

本記事では、Memcachedの基本的な使い方について詳しく解説してきました。インストール方法や設定、コマンドの使い方、各プログラミング言語からの利用方法などを紹介しました。また、RedisとMemcachedの違いについても触れ、使い分け方のポイントを説明しました。

Memcachedを活用するためのポイントは以下の通りです:

  • 適切なデータをキャッシュする
  • キャッシュのサイズと有効期限を適切に設定する
  • 必要に応じてキャッシュをクリアする
  • 大規模システムでは、Memcachedサーバーを複数用意し、負荷分散する

Memcachedを上手に使いこなすことで、アプリケーションのパフォーマンスを大幅に改善できるでしょう。ぜひ、自身のプロジェクトでMemcachedを活用してみてください。

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